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バイオクライマティックデザインによる住宅設計のパターン・ランゲージ

9 生の情動

更新日:2022年1月10日

Life’s Emotions


住む人の生の情動を喚起する生き生きとした住宅。
































*情動は身体という劇場で演じられ、感情は心という劇場で演じられる。感情の前に情動がある。狭義の情動とは、背景的情動、一次の情動(恐れ、怒り、嫌悪、驚き、悲しみ、喜び)、社会的情動(共感、当惑、恥、罪悪感、プライド、嫉妬、羨望、感謝、賞賛、憤り、軽蔑) の三つの階層に分類される。

アントニオ・R・ダマシオ(2005)『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』田中 三彦 訳、ダイヤモンド社

*この無名の質を語るとき、最もよく使われるのが「生き生きとした (alive)」という言葉である。無名の質を語るとき、もう一つのよく使われる言葉は「全一的(whole)」である。無名の質の別の側面を「居心地のよい(comfortable)」という言葉で捕えることができる。「全一的な」と「居心地のよい」 という言葉にまつわる閉鎖性を克服するのは 「捕われのない(free)」という言葉である。「正確な」という言葉より奥が深いのは「無我の (egoless)」という言葉である。無名の質を捕えるのに役立つ最後の言葉は、「永遠の (eternal)」である。

クリストファー・アレグザンダー(1993)『時を超えた建設の道』平田 翰那 訳、鹿島出版会

*ドゥルーズとガタリが提唱した「此性(これせい)」という概念がある。私たちが大好物を口にして、「そう、これだよ、これ!」と言うとき、そのときこそ、まさしく「此性」を経験している。真夏の避暑地に吹くそよ風は、我々の頬に「秋」の香りを運んでくる。…色々な数値で表象される要素や条件があって、それらすべてが秋の条件を満足する度合のうちに収まれば、私たちは秋の此性に到達して、「ああ、秋だなあ」と感じるものなのだろうか。…私たちが感じる「秋」の此性は、気候の一断面ではなく我々の気分や感慨でもあるからだ。…此性とは我々の感官と情感が世界に触れ、あるいは世界が我々の感官を触発し、我々と世界との間に形成される独特な個体である。我々にも世界にも属さない出来事の個体性と言ってもよい。「秋」の此性は、それゆえ自然環境が秋の諸条件を揃えることではないし、気象庁や気象予報士が決定するものもなく、私たちの生の一断面と世界の状態との幸福な出会いから作り出される出来事なのである。

澤野雅樹(2009)『ドゥルーズを「活用」する』彩流社


バイオクライマティックデザインによる住宅を設計しています。


▼その状況において

技術的に地域特性や気候特性に合わせた計画をするだけでは快適な生き生きとした住宅は実現しません。

なぜなら、住宅は人の生活のための空間です。生活は、さまざまな人の情動、感情とともにあるのです。


▼そこで

住む人に、驚き、喜び、共感、感謝、賞賛などの情動を喚起する、生き生きとした住空間を考えます。

例えば、「生き生きとした (alive)」「全一的(whole)」「居心地のよい(comfortable)」「無我の (egoless)」という言葉で捉えることができる生活、住まいの<此性(これせい)>について考えてみましょう。


▼その結果

生活において、最も頻繁に継起する出来事の<此性(これせい)>によってもたらされる生き生きとした無名の質をもった「永遠の (eternal)」の住まいへの道が開かれるかもしれません。

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